警察署で働く保健師を目指しているけど、実際にどんなことをしているのか詳しく知りたい。
しかし、どこを探しても警察保健師の情報なんて見つからない。
そんな人がたくさんいます。
そこで、本記事では、「元大阪府警察本部」保健師が経験した仕事内容や、身につけておきたいスキルについて紹介します。
本記事を読めば、実際に経験した者にしかわからない、警察保健師の情報を知ることができます。
警察保健師を目指したい人はぜひご覧ください。
※「警察保健師」という固有の名称はありません。警察官の健康管理をする産業保健師のことを、当サイトでは「警察保健師」と定義しています。
警察保健師の所属や仕事内容を紹介
警察保健師になってからの所属や仕事を紹介します。
<警察保健師の所属や仕事内容>
- 警察学校に短期間入校する
- 警務部や健康管理センターに所属
- 日常の仕事内容
警察保健師に抱く理想と現実のギャップを、できるだけ埋めますね。
警察学校に短期間入校する
「警察保健師」に合格すると、警務部などに所属します。
しかし、所属の前に待っているのは、警察学校への短期入校。
警察学校への短期入校は、一般病院で言う「初任者研修」です。
その「初任者研修」が、なんと2週間あります。
わたしたち保健師も、他の一般職員に混じって警察学校に入校します。
入った初日は、一般人が軍隊に入れられたような感覚で、ホントにカルチャーショックでした。
これだけは警察に入る前に、ちゃんと情報が欲しかったって思いましたよ。
心構えがあるのと、ないのでは全然気持ちが違いますからね。
何も知らない大卒の若者たちが、突然、警察の職員として、厳しく指導・訓練されます。
警察官に比べればなんともない訓練です。
しかし、わたしたちは保健師ですから(笑)。
どんなことがあったかというと、
- 大きな声で声を出す
- 警察歌を10分程度で覚えて歌う
- 遠足がある
- 敬礼の訓練
- 回れ右・左といった集団訓練がある
といった、異次元の空間がすごかったですね。
この入校で仕事を辞めてしまう職員も1人、2人いました。
わたしも2週間が終わるまでは、「警察でやっていけるかな?」って思ったほどです。
警察学校で友情や連帯感を育む
しかし、嫌なことばかりではありませんでした。
1週間の終わりごとにホテルの会場を貸し切り、歓迎会と親睦会が行われます。
教官をはじめ、同期の仲間たちと楽しく食事とお酒で盛り上がり、友情がすごく深まるんです。
警察学校の苦楽をともにした戦友(たった2週間ですけど)。
グッとみんなとの距離が縮まって、連帯感が生まれます。
仲間たちがいたから警察学校を乗り越えられました。
2次会は、朝まで梅田のカラオケボックスで歌いあかしましたよ♪
警察学校への入校は、わたしが入職した警察だけかもしれません。
あくまで「もしかしたら入校があるかも」と心づもりをしていてくださいね。
警務部や健康管理センターに所属
警察学校を修了したあとは、警務部や健康管理センターといった健康管理部門に所属します。
入校後の訓練が、まるで夢であったかのように、本当に普通の会社勤めに早がわりです。
学校では、返事1つにしても大声で返答だったのですが、こちらに帰ってくると、
じゃっきーくん、大きな声は出さなくていいから。
と担当の管理官に言われるしまつです。
っていうか「管理官」。
健康管理の部門でもいます。
刑事ドラマでしか見たことなかったですけど。
その「管理官」という響きに、用もなく「管理官」とお声かけしちゃいましたw
わたしの場合、警察本部に所属があったので、普段はそこでの仕事になります。
警務部〇〇係というところに、保健師が10名程度勤務していました。
警察保健師の仕事内容
日常の仕事内容は、以下の3つがメインです。
- 警察署での個別保健指導、健康教育・健康相談
- 保健指導後のカルテ記録
- 担当の業務
警察署での個別保健指導、健康教育・健康相談
個別保健指導では、保健師1人につき10所属ほどの担当部署・警察署が決まっています。
月の半分は、午前中にどこかの警察署にいて、保健指導や健康相談にのっているという状況でした。
健康教育では、主に朝礼のあと、剣道場などに集まってもらいます。
メンタルヘルス、受動喫煙の防止、肥満予防といった、警察職員の課題に合わせた健康のお話をしていました。
保健指導後のカルテ記録
午前中、警察署での個別保健指導や健康教育を終えると、午後は警察本部へ戻ってカルテの記録をします。
自分の担当業務と並行しながら、カルテを記録していきます。
しかし、保健指導の対象者も多く、すぐに机の上にカルテが山積みになっていました。
たくさんの仕事を抱えながらカルテを記録するので、正確さと同時にスピードも重要です。
担当の業務
担当業務には、警察官の健康課題を抽出し、チームを作って取り組みます。
保健師が3名1組ずつくらいのチームにわかれます。
当時の健康課題には、
- メンタルヘルス
- 肥満予防
- 感染予防
- 受動喫煙対策
- 長時間労働対策
があげられていました。
それぞれの健康課題に対して、
- 会議をとおしてデータの分析
- 保健計画の立案
- 保健指導・健康教育
- 結果の分析
といったようにPDCAサイクルを行います。
他にもこんな仕事がある
その他にも、たくさんの仕事に取り組んでいました。
- 健康管理研修
- 警察学校での保健の授業
- 同行受診
- 警察学校の保健室の先生
- 警察学校での訓練の救護
- 柔道大会や剣道大会の救護
- 全国高校総体や世界陸上といった各種大会での警察官の救護
- 学会での発表
普通に生活をしていたら、出会えない場面や場所、人にたずさわれて人生でも貴重な経験になります。
救護という名目で保健師がいますが、基本的には提携病院の医師・看護師が救護の対応をしてくれます。
保健師はケガをした警察官と、医師・看護師との調整役を担うことが多いです。
警察保健師が持っておくべき3つのスキル
警察保健師が身につけておきたい3つのスキルは、
- 保健指導スキル
- データ分析スキル
- 調整スキル
です。
3つの中でも、保健指導スキルは、やはり大きなウエイトを占めています。
では、それぞれを話していきましょう。
保健指導スキル
保健指導には大きく、
- 個別指導
- 集団指導
の2つがあります。
保健師は、この2つの指導をうまく場面で使いわけながら、相手の健康な行動をうながしていきます。
個別指導
警察保健師で特に重要となる個別指導は「メンタルヘルス」と「特定保健指導」です。
<メンタルヘルスに関する相談スキル>
警察職員でも、メンタルヘルスに悩む方は意外と多いです。
警察社会は、これまで気合いと根性の世界でした(今もあまり変わらないかも知れませんが)。
メンタルで悩むなんて、気合いが足りない。
なんて、平気に言う方もいます。
だんだんと、メンタルヘルスに関して正しい知識が浸透してきました。
しかし、まだまだ取り組みに力を入れていく必要があります。
しかも、
警察官は拳銃を扱うので、最悪な結果にも直結しやすく、とてもセンシティブな課題
です。
より丁寧な面談を行い、
- 状況に応じて病院へつなげる
- 復職支援を行う
などの対応スキルが必要となってきます。
<特定保健指導>
特に若い警察官はよく食べよく飲み、よく体を鍛えます。
朝に警察署を訪問すると、柔道や剣道の練習風景が見られるものです。
しかし反対に、ベテラン警察官は、お世辞にも良い体型を保てているとは言えない方もいます。
若いころの生活習慣がそのままにもかかわらず、年齢とともに活動が低下し、肥満体型になっていくのです。
特定保健指導は、警察職員の肥満を予防するための必須スキルです。
警察官にとって、どんな指導が効果的なのかを身につけていくことが大切になってくるでしょう。
コラム【師の言葉】傾聴する力を育てよ
「保健師は営業マンになりなさい。」
わたしが上司(保健師)に言われた言葉です。
保健指導では「聴くが8割、話すが2割」を心得るようになりました。
たとえば、
「血糖のデータが悪いですから、1日の摂取カロリーを控えましょう。」
と、データだけを見て、治すことばかりやってしまいがちです。
しかも、気づかないうちに自分ばかりが一生懸命にしゃべってしまうということもしばしば。
保健師ばかりがしゃべる指導に、相手の心が動くことは少ないでしょう。
個別指導で大切なのは「傾聴する力」です。
相手に自分の生活を話してもらい、生活の中で気になるところを言ってもらうんです。
たくさん話してもらって、自分で気づく。
自ら「生活態度を直してみようかな。」と思わせるスキルが重要になります。
集団指導
<健康教育>
個別保健指導については、看護師でも、なんとなく想像がつくと思います。
しかし、集団における健康教育は保健師ならではのものです。
個人における指導とは、まったく種類が異なります。
健康教育に必須なスキルは、下記のとおりです。
この4点を押さえておくと良いでしょう。
健康教育では、いっぺんに多くの人の心を動かして、健康行動へ移してもらえる可能性があります。
話をしているときに、相手をうまく乗せていると、
もっと話が聴きたい!
と、みんなが注目して、目をキラキラさせているのがわかります。
そんなときは、
さ〜みんな行くよ〜!着いてきて〜!
って、こちらも気分が向上します。
健康教育は下準備が大変で、やる前はいつもドキドキなんですけどね。
保健師をやってる醍醐味を味わえます。
<集団指導が上手になりたい方にオススメの本>
この本を1冊読んでおけば、相手を引き込む集団指導ができます。
最新版 はじめて講師を頼まれたら読む本
データ分析スキル
主な警察職員の健康課題には、次の項目があげられます。
警察保健師は、幸運なことに何千〜何万というデータを統計分析に扱うことができます。
- データの分析
- 保健計画の立案
- 保健指導・健康教育
- 結果の分析
といったように、PDCAサイクルを回して、警察職員がより健康になれる施策を考えることができます。
データ分析スキルは、保健師になってからでも十分磨いていけますのでご安心ください。
調整スキル
警察保健師は、警察職員と健康をつなぐ橋渡し役です。
内部・外部の産業医との連携をはじめ、警察署の健康管理の窓口である署員と、しっかりコミュニケーションをとっていかなければなりません。
- 署員の声を担当課の長へ届ける
- 署員の声を副署長(ときには署長)へ届ける
- 警察署の健康課題を、〇〇警察全体の問題として「健康管理部門」へ届ける
1つひとつを繋ぎながら、課題解決の糸口を探していきます。
交渉や提案をしながら、円滑に保健活動が行えるように調整スキルの向上が望まれます。
「警察保健師になりたい!実際の仕事内容や身につけておくべきスキルを紹介」まとめ
本記事では、「元大阪府警察本部」保健師が経験した仕事内容や、身につけておきたいスキルについて紹介しました。
実際に経験した者にしかわからない、警察保健師の情報をお届けさせていただきました。
警察保健師をめざす、皆さんのお役に立てれば、大変うれしいです。
「もっとこんなことも知りたい!」といった疑問があれば、お気軽に当サイトへお問い合わせくださいね。
ではまた。
あわせて読みたい記事はこちら